おかづバズーカの思い出

地元というセンチメンタルジャーニー

僕は数ヶ月に1度地元に帰る。
何をしにあのスラム街に帰るというのか。
それはただ美容院に行くためだけだった。
正直今住んでるところから地元へはかなり遠いので首都高で1時間もかかる。

それでも根が陰キャなので近くの美容院をお断りしたい。そういう心構えである。
だが、この日はなんとなく地元を散歩してから帰路につこう。
そんなことを思いついてしまったのだ。
なんということだ…。
このへんで遊んでいたのはもう25年くらい前だと言うのに鮮明に思い出せるではないか。

俺と思い出

この川…懐かしいな。
なんかその辺で落ちてた発泡スチロールとその辺に落ちてた木の棒(エクスカリバー)でじゃんけんに負けたK野君が川を横断しようとして3秒位で沈んで行ったっけ。
あのときはその後マリオカートとかさせてもらえなくて大変だったよな。ふふ。

この公園…。もうすっかり新しく改装されているじゃないか。
この公園といえばN中君がひたすら綾波レイについて一人で熱く語ってきたのがうっとおしくなって、しらねーよそんな糞アニメと言ってしまったなぁ。
そのあとひたすら「なんでなんだ!なんでなんだよぉ!」と木に頭をぶつけ出して、どうすんだよこの状況…と非常に後悔したっけ…。
この家…。昔つるんでいたK下の家じゃないか。

K下と言えば学校の帰りに俺がジャンプをコンビニで立ち読みしてたときのことが思い出される。
3分しか読んでなかったはずなんだけど、急に横のK下が凄い澄んだ目になっていた。

こいつのこの「面がまえ」…さっき授業中こんな「目」をしている男ではなかった…
まるで「10年」も修羅場をくぐり抜けて来たような…スゴ味と…冷静さを感じる目だ…
たったの数分でこんなにもかわるものか…こいつには小細工は通用しねぇ

そんなギャングのような覚悟をオレにさせてきた。
そう。K下は俺がジャンプを読んでる間、横でオネイニーをしていたのだ。

そんなバカな。死なないかな。

しかも「驚けよ!たおかす!俺は今!手を使わずに抜くことに成功した!」
そうか。成功したのか。性交は一生できなそうだな…と思ったっけ。
色々な…!本当にいろいろな思い出が思い出されるな!
ろくなもんじゃねえ!!

俺と塾の思い出

はっ!ここは…うそだろ?なくなってる?そんなバナナ!
俺が通っていた塾が!老人ホームになってる!これも高齢化社会の煽りか!
あの塾といえば俺が宿題忘れてギリギリまでもがいていたときに、K下が非常に澄んだ目で現れたことが思い出される。
K下のヤツ…急に後ろの隅っこの方にスッこんでいったと思ったら…まるで「10年」も修羅場をくぐり抜けて来たような…スゴ味と…冷静さを感じる目になってるじゃないか。
このパターン…前にも見た。

「おい!たおかす!オマエが宿題をやってる間!この俺はオネイニーをしていたぞ!悔しいか!」

数年後このセリフをこいつが悔やんでくれたことを願うばかりだった。

K下はどうでもいい。

この塾で俺は大事なことを学んだのだ。
それは学力などという歯糞のような話ではない。
もっと大事なことだった。

おかづ☆バズーカ

当時から僕は少年ジャンプを読んでおり、おっさんになった今でも「領域展開」して上司を始末したいと思っているのだが。
今はない「ハガキ戦士ジャンプ団」というものがあった。
はっきり言って別に特別面白いかと言われるとそうでもないんだけど、これにはがきを送ってる常連の名前に惹かれたのだ。

「おかづ☆バズーカ」

覚えている人も多いのではないだろうか。
なんせずっと上位だったから。
はっきり言って内容はどうでもいいんだけど、この名前…一体どんな人生を送ればこんな発想ができる?

俺は嫉妬した。

SHIT!K下のオネイニー談義など聞いている場合じゃない!ジャンプを読んでいるということはおかづバズーカも少年!俺と同い年くらいのはずだ!それなのに俺はなんなんだ!K下のオネイニー談義を聞かされながら宿題をやっている人生で終わって良いのか!?

まあ終わってるのはK下であり、少年しかジャンプを読まないと思っているたおかす少年は未だにジャンプを読んでるおっさんの俺を見たら絶望しそうである。
しかも上司に領域展開したい。あわよくば五条のやつしたいとか思ってるレベルである。
俺は決意した!超えてみせると!Go☆Beyond(超えていく)してみせると!!

そして塾でテストが行われた。
俺は決意にあふれていた。
まるで「10年」も修羅場をくぐり抜けて来たような…スゴ味と…冷静さを感じる目になっていたに違いない。
当然狙うは1位だ。

この塾はテストの結果を壁に張り出すというザ昭和と言った仕様だった。
だが、目的はそこではない。
おかづ☆バズーカに勝つ。それだけがおれの望みだった。

敗北

もう一点この塾では本名を書く必要がなかった。
何故か偽名で書くと偽名で壁にテスト結果が張り出される仕様だった。
それを利用したのだ。

結果は2位だった。
まあ2位でいいだろ。問題は「名前」である。俺はおかづ☆バズーカのインパクトに勝つ…その一点にだけ集中していた。

第2位:うんこため蔵

うんこためぞう!小中学生か!!!!
いや、中学生だった。まぎれもなく…このときの俺は…頭脳も、センスも…。
だが、中学生僕は勝ち誇っていた。
見たか…おかづバズーカ。これが俺だ。俺を見ろと…!!
そして張り紙を見た女子が言った。

なにこの2位キモい

初めて受け容れる敗北…… 心に去来したものは それは意外にも解放という名の絶望だった。
完全敗北だ…。よく見たら確かにキモい。なんだようんこため蔵って、マキバオーのパクリじゃねえか。鬱だ死のう。
だが、さらに追い打ちをかける事態に俺はまだ気づいていなかった。

1位:おなに○バズーカ

K下あああああああああああああ!!!てめえはオレに喧嘩売ってんのか!!!!ぶっ殺すぞ!!
無駄に頭がいいのもムカつくが、事前にこいつにおかづ☆バズーカのセンスの良さを語ったのが過ちであった。
まさか俺がマキバオーをパクってる間、おかづ☆バズーカをパクりやがるなんて…。

っていうかうんこため蔵もおなに○バズーカも張り出すこの塾はどうなってんだ?今ならツイッターで炎上してんぞ!
そんな心温まる思い出のある塾も今や年金ぐらしの住まいとなっている。
俺は自分が老人ホームに入る前に一回K下をぶっ飛ばそう。そう思った。
次の生きる目標ができたのだった。